新NISAの成長枠活用と個別株投資の違いは?
個別株投資とは、自分が好きな企業の発行する株(銘柄)を購入し投資するものです。金融機関で取引口座を開設して行う一般的な方法と、2024年1月から始動した新NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)口座を開設して行う方法があります。
今回は、個別株投資の特徴を確認しながら、双方にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
1.まずは個別株投資の特徴を知ろう
株式は、企業が事業資金を集めるために発行する有価証券です。株式を購入した投資家はその企業の「株主」となって株主総会の議決権を持てるほか、株式を保有したり売却したりすることで発生する利益を得られます。
株投資で得られる利益は、以下の3種類です。
・売買差益(キャピタルゲイン)
株式の価格(株価)は、業績や経済状況などによりつねに変動しています。売買差益は、購入した株式が値上がりした際、購入時よりも高い価格で売ることで発生します。
・配当金(インカムゲイン)
事業利益の一部を還元する目的で株主に支払われるものです。金額は企業によって異なり、業績などにより支払われない場合もあります。
・株主優待
株主に対して企業が商品やサービスなどを提供する制度です。自社製品のほか、商品券、割引券などさまざまで、優待がない株式もあります。
こうした利益を得られるほか、投資によってその企業を応援できることも株投資のメリットといえるでしょう。
一方、株投資にはデメリットもあります。
・購入にまとまった資金が必要
基本的に日本の株式は「100株」単位で売買します。例えば、株価1,000円の株式の場合、購入には100,000円必要になります。ただし金融機関によっては「株式ミニ投資」などと呼ばれる1株単位で購入できるサービスもあります。
・元本は保証されない
株価はつねに変動しているため、値上がりすることもあれば、大きく値下がりすることもあります。購入したときよりも低い価格で売却した場合は、投資当初の元本を下回る「元本割れ」のリスクがあることをきちんと理解しておきましょう。
・運用益に税金がかかる
株式をはじめ投資の運用で得た利益(売買差益、配当金)には、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(2037年12月31日まで)0.315%)の税金がかかります。
株投資を始めるには、証券会社などの金融機関で取引のための口座を開設します。複数の金融機関を利用することも可能です。
投資取引用では一般口座と特定口座の2種類があり、前者は利用者が投資商品の保有や売買によって発生した1年間の損益を計算し確定申告を行う必要があります。一方で後者においては、1年間の損益を金融機関が計算して年間取引報告書を作成してくれます。
さらに特定口座には「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2つに分類されます。前者は、その口座内で発生した損益に関する税金について金融機関が利用者の代わりに納税(源泉徴収)します。そのため利用者は確定申告の必要がありません。後者の場合は、年間取引報告書をもとに利用者自身が確定申告を行って納税します。
2.新NISAを活用した個別株投資の特徴は?
個別株投資は、新NISAを活用して行うこともできます。日本のNISA制度は2014年にスタートし、2024年1月から現在の仕組みとなりました。
新NISAを活用する大きなメリットは、前項でデメリットとして挙げた「運用益にかかる税金」が、一定の投資額までゼロ(非課税)となることです。例えば、10,000円の利益があった場合、通常なら約2,000円の税金が課せられるところ、NISA口座の取引であれば10,000円をすべて利益として受け取れるのです。
※ ①整理・監理銘柄 ②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
引用元:金融庁NISA特設Webサイト(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html)
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、個別株投資を行う場合は「成長投資枠」を使います。上図のように、国内外の上場株式(証券取引所で売買されている株式)への投資について年間240万円、一生涯で1,200万円まで非課税で運用できるのです。非課税保有限度額は取得時の金額で管理されます。さらに運用していた株式を売却した場合は、その株式の取得金額分だけ、非課税保有限度額が復活し再利用することが可能です。
新NISAによって、税金を抑えながら資産形成ができます。また課税されないため、確定申告も不要です。しかしながら、注意点もあります。
・整理銘柄や監理銘柄に指定されている株式、上場新株予約権、即日現金預託の株式は投資対象外
・非課税で運用できる投資金額には上限がある
・口座は1人1口座のみ開設可能で、金融機関は1年に1回変更可能
・損益通算ができない(課税口座では可能だがNISA口座ではできない)
損益通算とは、同じ年に発生した利益から損失分を差し引くことです。
例えば、課税口座(一般、特定)で、100万円の利益と30万円の損失が出た場合、損益通算すると「100万円−30万円」で70万円に20.315%の課税がされます。
しかし課税口座で100万円の利益、NISA口座で30万円の損失が出た場合、損益通算できないため、課税口座の利益100万円すべてに税金がかかります。
3.まとめ
今回は、個別株投資の特徴、そして課税口座を使った場合、新NISAを活用した場合について解説しました。
2つの投資方法の大きな違いは「運用益に20.315%の税金がかかるか、かからないか」です。投資できる上限額が設けられていることや、1年に1つの金融機関しか選択でいないなど制約はあるものの、新NISAを活用しない手はありません。
さらに投資額を増やしたいとき、NISA対象外の金融商品に投資したい場合は、新NISA口座と課税口座の両方を運用することも一案です。
双方の特徴をよく理解した上で、メリットを享受しながら自分に合った投資方法を選択できるとよいでしょう。
参考:
金融庁ホームページ
(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/)
(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/hyakka/part2/kabushiki/kabushiki003.html)