
【不動産勉強】不動産開発事業ってどんな仕事をしているのか?業務の仕組みを紹介します!
不動産開発と聞くと、マンションや商業施設の開発、大型再開発プロジェクトなど、ダイナミックな仕事をイメージする方も多いでしょう。しかし、実際に不動産開発会社がどのような業務を行っているのか、その全体像はあまり知られていないと思います。
この記事では、不動産開発事業の業務範囲と収入の仕組みをわかりやすくお伝えします。不動産開発事業における考え方は不動産ビジネスの全体像や不動産投資に通ずる部分が多いため、不動産について勉強したい方、不動産投資に関心のある方に役立つ内容です。
1.不動産開発事業の業務範囲
不動産開発とは、一言でいえば「その土地に新たな価値を生み出す事業」です。不動産開発事業を行う会社は、デベロッパーと呼ばれます。
マンション、オフィス、商業施設などのあらゆるアセットを開発する会社は総合デベロッパー、マンションを開発する会社はマンションデベロッパー、商業施設を開発する会社は商業デベロッパーと呼ぶこともあります。
不動産開発事業は街に大きなインパクトを与えられ、不動産業界の中でも花形と言われますが、調整すべき事項が多く地道で泥臭い業務です。
<土地の仕入れ>
不動産開発事業は、土地の仕入れから始まります。仕入れる方法は、土地を購入する場合と賃借する場合の大きく2種類です。
不動産開発会社は、将来の開発ポテンシャルや周辺環境、用途地域・容積率などの法的制約、事業採算性などを総合的に分析したうえで土地を選定します。
土地を仕入れる際は、地主や仲介会社との価格や開発内容の交渉が発生し、大きな労力を要します。ときには、複雑な権利関係の整理も必要です。一つの土地に複数の権利者が存在する場合や相続問題が絡む場合など、一筋縄ではいかないことも往々にしてあります。
<商品企画・事業計画の策定>
次に行うのは、商品企画・事業計画の策定です。実際には土地の取得が確定する前から構想を練っていますが、どのような建物を建てるのか細部を決めていきます。
この段階では、ターゲットの明確化が重要です。マンション開発であれば単身者向けか家族向けか、オフィス開発であれば大企業向けかスタートアップ企業向けかなど、開発後の建物を利用する人を決めていきます。
競合物件の分析も欠かせません。同一エリア内の類似物件の価格帯や設備仕様、販売状況を調査します。
<設計・建設のマネジメント>
企画が決まったら設計・建設へと進みます。設計は設計事務所に依頼するのが一般的です。設計事務所とコミュニケーションを取って、図面を作成してもらいます。
建設はゼネコン(総合建設業者)へ発注します。複数のゼネコンに事業計画を提示して、建設費用の見積もりを出してもらい、コンペで決めることも多いです。
建築中は、工事進捗の確認やコスト管理、品質管理、安全対策など、不動産開発事業者が全体をマネジメントします。
設計段階では、建築基準法、消防法、景観条例など、様々な法規制をクリアしなければなりません。
建設工事においては、品質管理が極めて重要です。デベロッパーが定期的に現場を訪問し、工事の進捗状況や品質をチェックします。昨今は、環境配慮やサステナビリティへの関心も高まっています。
<販売または賃貸・運営>
建物が完成したら、いよいよ販売または賃貸です。不動産開発会社が自ら販売・賃貸する場合もありますが、自社のグループ会社や外部の仲介会社などに委託するケースも散見されます。
たとえば、マンション販売の場合、モデルルームの設営、販促活動、購入希望者の対応、契約手続き、引き渡しといった流れで進めます。
オフィスや商業施設の賃貸事業の場合は、テナント募集や賃料設定、契約締結を行い、入居後は継続的なテナント管理やメンテナンス業務を行わなければなりません。
いずれのアセットであっても、長期的に価値を維持するために、定期的な改修工事が必要です。不動産開発事業は、「建てて終わり」ではなく、そのあと数十年にわたって利用されることを考えなければならないのです。
2.不動産開発事業の主な収入源
不動産開発事業の収入源は、主に以下の2パターンです。
1つは、開発した不動産を完成後に販売し、売却益を得るビジネスモデルです。一度に得られる利益が大きい点、物件を保有しないため管理の手間が不要な点がメリットです。
一方で、売れるまで収益が発生しない、市況に左右されやすくリスクが大きいといった注意点があります。
このモデルでは、市場タイミングの見極めが大切です。不動産市況が好調な時期に売却すると大きな利益を得られますが、市況が悪化している時期に売却せざるを得ない場合は、期待した利益を得られない可能性があります。
販売時期の分散によるリスク管理も重要な戦略です。大規模マンション開発では複数期に分けて販売することで、市況変動のリスクを軽減しつつ、需給バランスを調整します。
もう1つは、開発した物件を自社で保有し、賃料収入(インカムゲイン)を継続的に得るビジネスモデルです。
保有すると長期的な安定収入が得られます。そのためには、賃料相場の動向把握や入居者・テナント管理、施設運営のノウハウが必要です。
賃料収入を得るインカムゲインモデルでは、物件の立地と品質が収益性を左右します。好立地で、時代のニーズに合った設備を備えている物件は、長期間にわたって安定した賃料収入を期待できます。それに対して、立地や設備に問題がある物件は、空室率の上昇や賃料下落のリスクがあります。
また、テナント・入居者との良好な関係構築も重要です。テナントや入居者が頻繁に入れ替わると、空室になって賃料の損失が発生し、原状回復費用や入居者募集費用もかかります。長期間入居してもらうことで、これらのコストを削減できるのです。
3.不動産開発事業における事業採算性の考え方
不動産開発事業においては、その物件がどのくらいの収益を生むかを見極めています。開発の初期段階では、以下のような要素から収益をシミュレーションします。
- 土地の取得費用
- 設計費用・建設費用
- 金融費用(借入金の利息など)
- 各種諸経費(登記費用、広告費、仲介手数料など)
- 売却価格または賃料収入の見込み
これらの要素から、事業収支がプラスになるか、どの程度の利回りが期待できるかを検証します。利回りの目安はプロジェクトの規模やリスクによって異なりますが、NOI(実質利回り)2〜7%程度を目指すケースが一般的です。
NOIとは、物件の年間賃料収入から運営コストを差し引いた利益を指します。ここでいう運営コストには、管理費、修繕費、保険料、テナント募集費用などが含まれますが、ローン返済や減価償却、法人税などは含まれません。
つまりNOIは、物件そのものの収益力を示す指標です。多くのデベロッパーは、NOIを含めたさまざまな数値を鑑みたうえで、売却と保有のいずれかを選ぶ、もしくは2つをバランスよく組み合わせて経営しています。
4.不動産開発事業と不動産投資に通ずる考え方
ここまで、不動産開発事業の事業範囲、収入源、事業採算性の考え方について説明しました。
実は、これらは不動産投資にも通ずる考え方です。
まず、事業範囲と流れが似ています。不動産投資においては、戸建やマンションを購入します。この際、将来の開発ポテンシャルや周辺環境、事業採算性を検討します。
仮に空き家をリノベーションして販売・賃貸するのであれば、どのような人に入居してもらうのかターゲットを想定しなければなりません。
DIYでリノベーションする場合もありますが、業者に施工を依頼する際は、進捗確認などのやり取りが発生します。
そして入居者を募集し、契約締結と引き渡しを行います。賃貸であれば、管理会社に依頼するなどして、継続的な管理が必要です。
収入源も、売却益を得るか、賃料収入を得るかといった点で共通しています。販売するか、賃貸するかのメリットとデメリット・リスクも近しいものがあります。
さらに、収入からコストを引いて事業採算性を算出する際の考え方も同様です。不動産投資においても、物件の取得費用、修繕費用、借入金の利息など、各種諸経費(登記費用、広告費、仲介手数料など)、売却価格または賃料収入の見込みから採算性を検討します。
このように、今回お伝えした不動産開発事業に関する内容は、不動産投資においても参考になります。
5.不動産開発の今後の展望
最後に、不動産開発事業の今後の展望をお伝えしましょう。これらの動きも、開発事業に留まらず、不動産について知識を深めるにあたって役立つ内容です。
<テクノロジーの活用>
不動産業界でもAIの活用が進み、市場分析や建設プロセスの効率化、施設運営の自動化などに活用されています。
<サステナビリティへの対応>
環境負荷の低減、エネルギー効率の向上、リサイクル材料の使用など、持続可能な開発への取り組みも重要です。ZEB(Net Zero Energy Building)やLCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)など、環境性能の高い建物の開発が注目されています。
<多様化するニーズへの対応>
働き方の変化、シェアリングエコノミーの普及、「体験」を含めた価値提供といった多様化するニーズに対応した開発が進んでいます。具体的には、コワーキングスペースやシェアハウス、モノを売るだけではない商業施設などです。
6.まとめ
不動産開発は、土地の仕入れから設計・建設、販売までをコントロールし、売却益または賃料収入を得る事業です。
土地の取得や設計・建設などにかかる費用と売却価格または賃料収入の見込みから、採算を考えて事業を行っています。
不動産開発事業における考え方は、不動産投資にも通ずるもので、かつ不動産というビジネスへの理解にも役立ちます。不動産のことを勉強したい方や不動産投資をしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。