築古戸建投資で知っておきたい減価償却の基本
不動産投資の中でも、特に最近は「築古戸建投資」に挑戦する方が増えています。これは築年数が長く経過した一軒家を購入、賃貸することで家賃収入を得るもので、社会問題化する空き家の増加の解決策としても、注目が高まっています。
実は築古戸建投資の場合、物件の収益性や利回りと同じくらい重要となるのが「減価償却」です。減価償却を正しく理解することが、節税や収益の最大化につながっていきます。
今回は、築古戸建投資を行う際に必ず知っておきたい、減価償却の基本的な仕組みや具体的な計算方法をわかりやすく説明します。そして、築古戸建投資においてなぜ「築20年超の木造住宅」が有利と言われるのかについても、シミュレーションを交えながら解説していきます。
■減価償却とは?
まずは、減価償却の基本的な知識を学びましょう。
国税庁のウェブサイトでは、減価償却について以下のように説明されています。
「事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます」
戸建てやアパートのような建物、機械など長期間使用する資産は、時とともに劣化して価値が徐々に減少していきます。このように価値が減少した分を、会計のルールに基づいて一定期間にわたり「費用として計上していく」手続きが「減価償却」なのです。
具体的には、取得のためにかかった費用を、耐用年数(使用に耐えられる年数)で分割して経費計上します。つまり、建物の購入費用は高額になりますが、購入した年にその全額を一括で経費にすることはできないのです。代わりに、法律で定められた「法定耐用年数」で分割し、毎年少しずつ「減価償却費」として計上していくわけです。
では築古戸建投資において、なぜ減価償却が重要なのでしょうか?
毎年の減価償却費は、「実際のお金の支出を伴わない経費」です。不動産投資の利益は主に家賃収入ですが、課税対象となる不動産所得を計算するにあたっては、家賃収入から必要経費(管理費、修繕費、固定資産税など)、さらには減価償却費を差し引くことができます。
つまり減価償却費が大きければ大きいほど、実際の支出はゼロのまま不動産所得を圧縮でき、結果として所得税や住民税を軽減する節税効果が期待できるのです。
■建物の耐用年数と計算方法
減価償却費を計算する上で、ポイントとなるのが「法定耐用年数」で、年数は建物の構造によって異なります。
<主な建物の構造と法定耐用年数>
| 構造 | 用途 | 法定耐用年数 |
| 木造・合成樹脂造 | 住宅用 | 22年 |
| 木骨モルタル造 | 住宅用 | 20年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 住宅用 | 47年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 住宅用 | 38年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材の厚さ3mm以下) | 住宅用 | 19年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材の厚さ3mm超4mm以下) | 住宅用 | 27年 |
(参考:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備))
個人の不動産投資における減価償却費の計算は、毎年一定の金額を償却する「定額法」という以下の計算方法が用いられます。
減価償却費=建物取得価額×定額法の償却率
「償却率」は、耐用年数に応じて定められています(参考:国税庁 償却率表)。例えば、法定耐用年数が22年の木造住宅の場合、償却率は「0.046」です。
例えば、3,000万円の建物を投資目的で購入する場合、「3,000万円×0.046」で減価償却費は年間138万円となります。
ただし築古戸建投資のように中古の建物を取得した場合、法定耐用年数を超えていたり、すでに数年経過していたりすることもありますよね。
その際は、「簡便法」といって新品の建物を購入した時とは異なる方法で耐用年数を計算します。
・法定耐用年数をすべて経過している場合
耐用年数=法定耐用年数× 20%(計算結果の1年未満の端数は切り捨て)
・法定耐用年数の一部を経過している場合
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%(計算結果の1年未満の端数は切り捨て)
※いずれの計算方法を用いる場合も、計算結果が2年未満の場合は「2年」となります。
(参考:国税庁 No.5404中古資産の耐用年数)
■築20年以上の木造住宅はなぜ節税効果が高いのか?
築古戸建投資では、「築20年超の木造住宅」が特に節税効果が高いと言われます。これまで解説した計算方法をもとに、その理由を探っていきましょう。
例えば、築25年の木造住宅を購入したとします。
木造住宅の法定耐用年数は22年ですから、すべて経過している状態です。そのため、耐用年数を求めるためには、以下の計算式を適用します。
22年(法定耐用年数)×20%=4.4年
1年未満の端数は切り捨てのため、この建物の耐用年数は「4年」になりますね。
もし新品の木造住宅を購入したら、購入費用を法定耐用年数の22年かけて償却するのに対し、築25年の木造住宅の場合は、わずか4年と短期間で償却できます。
つまり、1年あたりの減価償却費を大きく計上できるため、課税所得を大幅に圧縮し、高い節税効果を期待できるのです。これが、築20年超の古い木造住宅が投資対象として魅力的で注目される理由です。
■実例で学ぶ減価償却のシミュレーション
それでは、具体的な数値を使って減価償却費の計算をしてみましょう。
<物件について>
物件:築30年の木造戸建住宅
購入価格(総額):1,200万円
内訳:建物価格 500万円、土地価格 700万円
<計算の手順>
ステップ1:耐用年数を計算する
木造の法定耐用年数22年を経過しているため、「22年×20%=4.4年」で耐用年数は4年となります。
ステップ2:償却率を確認する
国税庁の「減価償却資産の償却率表」から、耐用年数4年、定額法の償却率は「0.250」と確認できます。
ステップ3:年間の減価償却費を計算する
500万円(建物の価格)×0.250(償却率)=125万円
この物件は、年間125万円を減価償却費として経費計上できます(4年間)。
もし、この物件から得られる年間の家賃収入が100万円で、その他の経費が20万円だった場合、以下の計算式によって不動産所得は「45万円の赤字」となります。
100万円(家賃収入)-20万円(その他経費)-125万円(減価償却費)= ▲45万円
「減価償却で不動産所得が赤字になったらどうなるの?」と思うかもしれませんね。
実は、この赤字は、給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することができます。
もし不動産の購入者が給与所得者で、課税所得が500万円だった場合、その給与所得は不動産所得の赤字との相殺が可能です。
この場合、課税所得を455万円(500万円-45万円)に圧縮できて、所得税・住民税の還付や減額が期待できるのです。
日本の所得税は累進課税で、所得が高いほど税率は高くなります。そのため、築古戸建投資の場合、給与の所得が高い人ほど高い節税効果を得られる可能性があります。
■注意点:土地は減価償却できない!
前項のシミュレーションを見て、「あれ? 700万円の土地も減価償却資産ではないの?」と気になられた方もいらっしゃることでしょう。
これは非常に大切な注意点となりますが、減価償却の対象は「建物部分のみ」です。
土地は、それ自体が経年劣化するものではないため、会計上は価値が減少しないと考えられています。そのため、減価償却費を計上することはできないのです。
不動産を購入する際は、売買契約書などで「土地」と「建物」の価格を明確に区分しておく必要があります。もし内訳の記載がなければ、固定資産税評価額を元に按分するなど、建物部分の価格を別途算出しなければなりませんので、注意しましょう。
■まとめ
築古戸建投資における、減価償却について解説しました。
一見すると複雑に感じるかもしれませんが、築古戸建投資に挑戦するのであれば理解しておくことは必須と言えます。正しい知識を持って投資に臨むことで、より有利に資産形成を進めることができると思います。
ただし、築古戸建投資にはメリットもちろん、デメリットやリスクもあります。もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ読んでみてください。
投資に対して不安や疑問がある場合は、税理士や不動産投資に詳しい専門家などに相談してみるのも一案です。当社でもお手伝いできることがあるかもしれません。ぜひ一度お問合せください。