
不動産投資において、個人と法人どちらの名義で買ったら良いのか?
不動産投資を始める際、「個人と法人のどちらの名義で買ったら良いのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は、それぞれのメリットとリスクやデメリットを税制面や経費面から比較します。どちらが自分にとって有利かを判断する材料としてぜひ参考にしてください。
1.個人で買う場合のメリット・リスク
まずは、不動産を個人の名義で買う場合のメリットとリスクを説明します。
<個人で買うメリット>
個人で買う場合のメリットは、「個人の所得が上がること」です。不動産投資で得た家賃収入や売却益は、原則として個人の所得として計上されます。
給与とは別に収入源を持つことができ、生活の安定や資産形成につながります。不動産の家賃収入は大きな価値を持つ第2の柱です。
もうひとつのメリットとして、「所得税の節税対策になること」も挙げられます。
個人で不動産を購入した場合、減価償却費やローンの支払利息、管理費、修繕費などを経費として計上できます。不動産投資での収入が一定額以上になっても課税所得を圧縮できるため、所得税の節税につながるのです。
<個人で買うリスク>
個人で買うのにはリスクも伴います。
1つ目のリスクは、「個人で保有している不動産を売却して利益が出た場合、所有期間が5年以下だと短期譲渡所得として課税されること」です。短期譲渡所得の税率は約39%と高いため、急に売却しなければならない際に大きな負担となる恐れがあります。
「減価償却が終わったあとに課税所得が増えること」も認識しておきましょう。
不動産の建物部分の費用は、法定耐用年数に基づいて減価償却となります。不動産を購入したした年に全額が経費になるのではなく、決まった年数でわけて計上するのです。
そのため、耐用年数を過ぎたあとは減価償却による節税効果がなくなり、同じ家賃収入を得ていても課税所得が増えてしまいます。
2.法人で買うメリット・デメリット
不動産を法人名義で買う場合のメリットとデメリットも紹介しましょう。
<法人で買うメリット>
「法人税は一定のため、収入が高ければ高いほど所得税よりもお得になること」が法人で買うメリットのひとつです。
個人の所得税は累進課税であり所得が増えるほど税率も上がっていくのに対して、法人の場合は一定の税率に抑えられています。したがって収入が高いと、法人の方が手取りが多くなる可能性があるのです。
「保有期間によって税率が変わらないため、短期譲渡を気にしなくて良いこと」もメリットです。個人の場合と違い、法人は短期譲渡・長期譲渡という概念がなく、不動産の売却益に対しても通常の法人税が適用されます。
<法人で買うデメリット>
法人で買うと、「個人の所得税は節税できないこと」がデメリットです。法人と個人は法律上まったく別の存在であり、別々に課税されます。よって法人で不動産を保有していたとしても、それが個人の所得税の節税につながるわけではありません。
「法人を維持する手間と費用がかかること」も認識しておいてください。法人を設立すると、毎年の法人税申告や会計処理が必要になります。
税理士による決算申告費用は年間20万円、月次の顧問料は2万円ほどが相場のため、年間で約44万円かかることもあります。
所得税と法人税の観点から考えて、年間の収入が800万円以上になる見込みであれば、法人名義で買った方が良いというのがひとつの判断基準です。
ただし、法人化によって発生する設立や運用の手間も考慮する必要があります。はじめは個人でスタートし、目処が立ってから法人化しても良いでしょう。
3.まとめ
不動産を買う際に、個人名義と法人名義のどちらが良いかは一概には言えません。それぞれにメリットとリスクやデメリットが存在します。
短期的な利益だけでなく、長期的な資産形成や節税対策なども視野に入れた上で慎重に選びましょう。