不動産営業の歩合体系や目標数字を公開!相手の「立場」を理解しよう!
不動産屋さんに行った時、物件をみたり、情報をもらったりする際、「他で申込が入る前に契約しましょう。」「決済日(または入居日)は先に遅らせてもいいのですが、契約日は月内でお願いします。」などアドバイスをもらうことがあると思います。不動産売買や賃貸というのは大きなお金が動きます。決断をする買主または借主から考えると、非常に大きな決断といえるでしょう。「物件自体が人気だったら、確かに月内で契約した方がいいか。」とすばやいご判断をすることも良いと思います。実際に、人気物件などは、早く判断しないと、なくなってしまいますし、全く同じ物件というものもありません。
しかし、本当にそれでよいのでしょうか。
もちろん早く決めるに越したことはないのですが、予備情報として持っておいた方がいいものもあります。
そしてそれは、不動産会社の営業マンが皆さんに協力してくれることにつながる重要な情報です。また、その客観的な事実から、そのアドバイスが的確かどうかを判断することもできます。相手の「立場」というところも、イメージしておくことで、実は利害が一致していて、話を進めやすくなることがあるのです。
ということで、今回は、みなさんが実際に話をする相手、営業担当者様の大体の目標数字や歩合相場についてお話ししていきます。
こちらの記事からは下記のことがわかります!
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◾️前提として
◾️賃貸営業の月次目標数字や歩合相場
◾️売買営業の月次目標数字や歩合相場
◾️まとめ
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前提として
まず前提として、不動産営業の給与体系は、ほとんどの場合が、固定給+歩合給となります。
固定給は地域によっても異なりますが、額面20万円〜30万円程のことが多いです。
これからお話しする内容は、関東圏の場合と仮定させていただきます。
また、不動産の営業を志す方は、上昇思考で、成績で他の営業に負けたくないという強い意志を持っている方が多いです。加えて、収入面でも「年収1,000万円を超えたい!」というような、それぞれの夢に向けて活動している方もたくさんいらっしゃいます。その強い意志をもっている社員の中で、結果を出すことで役職がついていきます。主任、係長、課長、部長という昔ながらの役職がついているのも、そういった序列を意識するという目的もあると言われています。
課長職以上でないと、固定給が大幅に上がっていくことはあまりみられません。そうなってくると、成績を伸ばして給与をあげていくとなると、固定給以外が歩合給となるため、歩合給を増やしていくこと=成績をあげていくことが給与UPにつながります。この給与UPは不動産営業としては重要なポイントになっていきます。
会社の規模によっても条件が異なります。
理由は、大手不動産会社と中小規模の不動産会社とでは、「知名度」と「持っている不動産の情報量」が違います。その知名度や情報量により、売却用や賃貸用でお預かりしている物件の母数が圧倒的に違うため、その中に「優良物件」を多数抱えている可能性があるということです。大手不動産会社は、この「知名度」を維持する、もしくは磐石なものにするため、莫大な費用を広告費にあてています。そしてその費用は当然、売買仲介や賃貸仲介で得られる仲介手数料等で回収することになります。そうなると歩合にあてられる予算が少なくなっていくため、大手不動産会社は知名度が高い分、歩合が少ないということになります。
一方で、中小不動産会社所属の場合は、広告費をかけることがなかなか難しいため、知名度というよりは、個人の営業スキルによる契約も多くなってきます。そうすると歩合にあてられる予算を大きくすることができるため、結果的に歩合給の単価が高くなるという仕組みになっています。
先程、「優良物件」という表現をしましたが、こちらの意味は、「営業しなくても売れる物件」という意味です。
大手不動産会社が開発した分譲マンションや、唯一無二の立地に建っているタワーマンションなどは、欲しい方もたくさんいらっしゃるため、特に営業活動をするためポータルサイトに掲載したりしていないのは「営業しなくても売れる物件だからです。その物件特有の広告を打ち出して、周辺の方々にポスティングしたり、モデルルームをつくってそこで来店予約を待つといういわゆる「待ち」の営業が可能になっています。正直いうと、ここには「営業力」というのはそこまで必要ありません。適切なクロージングさえできれば、その優良物件で申込をいただくことは難しくありません。
このように、物件によっても会社によっても成績の出し方や歩合給が異なるという前提があるということは理解しておいてください。
賃貸営業と売買営業で比較しても、目標の額や、歩合の額は大きく異なります。それは1つの取引であげられる利益の額が違うからです。賃貸営業の方が、売買営業と比べて、歩合給の額は少なくなっていきます。
前提として、どういう環境や思いで営業をしているのかということを簡単に紹介しました。
それでは、それらのことをご理解いただいた上で、それぞれの条件の相場等をみていきましょう。
賃貸営業担当者様の月次目標数字や歩合相場
・賃貸営業の月次目標数字
賃貸営業の皆様も前述の給与体系と同じで、固定給+歩合給です。目標数字という言葉の意味はわかるかもしれませんが、いわゆる「ノルマ」です。1人の営業として、月次でこの数字を達成していないと、会社にいづらくなってきてしまいます。ハラスメントがあるかは不明ですが、東京都内や関東圏の不動産会社でも営業会社であれば、その目標数字が達成できない月末は、強い叱責を受けることも、未だにあるということです。
賃貸営業の月次目標数字ですが、件数ではなく、手数料総額で設定されていることが多いです。それは、物件ごとに家賃が異なることで仲介手数料が異なってくるからです。家賃4万円の物件の賃貸仲介と、家賃30万円の物件の賃貸仲介とでは、会社にもたらす収益額も大きく異なってきます。
その月の目標数字ですが、100万円(税抜)であれば、1人前の賃貸仲介営業ということになります。繁忙期には月200万円(税抜)を上げる営業の方もいらっしゃいます。繁忙期でなくても、月200万円(税抜)をあげる賃貸営業がいれば、不動産で独立できるレベルと言えるでしょう。
月の目標数字を100万円と考えると、6万円の家賃の入居申込で、6万円の仲介手数料がとれたとして、月に16件契約する必要があります。ほとんど営業日に契約している計算になるため、現実的ではないように感じます。
じゃあどうやって売上をたてているのか。
賃貸仲介の業界では、オーナーから広告料(別名AD)と言われるものを仲介手数料と別で得ることができます。もし、1件の契約で、オーナーからのADが家賃2ヶ月分、仲介手数料が家賃1ヶ月分で合計3ヶ月受け取ることができた場合、先程の月16件の契約件数を10件前後に減らせることになります。
賃貸営業のみなさんはこのように、効率的に動いて、売上をつくっているのです。そうなるとやはり「効率」が重要なポイントになってきます。
オーナーとしては、広告料を多くお支払した方が、掲載してくれたり、紹介してくれる機会が増えます。地方の案件では、ADを3ヶ月以上お支払されるオーナーも数多くいらっしゃいます。
・賃貸営業の歩合給相場
続いて、賃貸営業の皆様の歩合給についてです。これは店舗や会社によっても様々で、多種多様になっています。大きく分類すると下記のような歩合規定があります。あくまで一例になります。
①契約1件あたり1万円
月末締で歩合月または翌月給与と合算して支払
②売上の15%(月100万円達成で月15万円の歩合支給の計算)
月末締で歩合月または翌月給与と合算して支払
定額のものと、歩合率で大きく分かれています。
金額というよりも、月末締というのが、今回の記事のポイントになります。歩合給や目標数字を起算する日が重要なのです。各不動産会社は「締日(しめび)」というものを定めています。その締日がいつなのか。多く不動産会社は月末に設定されています。その締日では、契約日を締めるのか、入金日で締めるのかによってよく、前者を「発生ベース」、後者を「入金ベース」という言葉で表現したりします。
担当してくれている賃貸営業が所属している不動産会社の「締日」が、どこにあるのかというのは確認しても良いと思います。
賃貸営業の方から、月内に契約したい、仲介手数料の入金は月内にお願いします。など伝えられた場合は、そういう規定があることをイメージしてください。
当社では、お互いに気持ちよく取引をしていただく方がいいと考えておりますので、もし皆さんから無理なお願いをする際に、そういった手数料の送金を早めるなど、相手の立場を配慮したご相談をおすすめしています。 オーナーの立場ですと、何か仲介営業に対して、お願い事をする際、広告料(AD)を増額するというのは効果的かと思います。
売買営業担当者様の月の目標数字や歩合相場
・売買営業の月次目標数字
売買営業の皆様も前述の給与体系と同じで、固定給+歩合給です。賃貸営業と比較すると業務量は多くなる傾向にあります。仲介手数料を買主からも売主からも報酬としていただく、「両手」で報酬を得るのが効率的な動きになってくるため、不動産オーナーや地主の方々に営業して、売り物件の情報を獲得した後、次は買い手を見つけるためにポータルサイトに登録をしたり、自社サイトに登録をおこないます。そこで実際に問い合わせがあれば、現地に伺いご案内をおこないます。現地で、住宅ローンで自己居住用としての物件購入の場合は、ローン審査を斡旋したり、そのための必要な書類をご案内、提携の金融機関に融資のご相談をしたりします。今では、買主がインターネットでネット申込をするのが一般的になってきましたので、そこまでのサポートは不要になっていることもありますが、業務量は多いということには変わりはありません。そういったことを1人でこなしていくため、不動産に関する知識はもちろんのこと、全体のディレクションスキルも必要になってきます。
関東圏の不動産で、マンションや戸建など色々と種類はありますが、よくある価格帯として3,000万円の物件を仲介したとします。その場合の片手の仲介手数料は、960,000円(税抜)となります。両手になるとその倍なので、1,920,000円(税抜)がその会社として受領する仲介手数料です。
月次目標数字は仲介手数料として、関東の大手不動産で500万円(税抜)、中小企業の不動産で300万円(税抜)〜400万円(税抜)、ちなみに地方で200万円(税抜)であれば、1人前の売買仲介営業ということになります。
関東圏において、月間500万円(税抜)の目標数字というのは、一般社員の数字になりますが、トップセールスにもなると仲介手数料収入で月間3,000万円を超える場合もあります。この目標数字、トップセールスになるためには、取引価格1億円の不動産を両手で仲介して、612万円(税抜)。こういった売買を月に数件おこなっていく必要がありますが、非常に難しいと考えられます。オーナーや地主さんとお付き合いがあり、その紹介などで自動的に物件の情報が集まってくるような環境にしない限りは、トップセールスで達成し続けるというのは極めて困難かと思います。
一般社員の目標数字で考えた時に、3,000万円の物件の両手仲介を月に2件おこなうか、片手仲介を4件おこなえば、おおむね目標数字を達成することができます。数字を達成できなかった社員は、賃貸の場合よりも強い叱責にあうことがあります。最近ではなくなってきたというものの、そういったパワハラなどは未だに不動産業界では残っているようです。もちろん目標達成できなかった場合は、歩合が少なくなりますし、自分自身でも悔しい思いをするでしょう。
そういった環境で仕事をしている不動産売買営業。その目標数字を達成するためには、やはり月内契約と売買の決済日のスケジュール管理は、精度の高いものが求められます。決済日に関しては、金融機関とローンの契約(金銭消費貸借契約)をおこなうことがほとんどのため、金融機関の担当者の予定も影響していきます。余談ですが、金融機関の担当者も目標数字を持っています。そのため、決済日を一度決めたらほとんどの場合、変更になることはありません。決済日というのは関わる方々が多いため、決済日をずらすというのは関係各所に多大な迷惑をかけることになります。その陣頭指揮をとっているのがこの売買営業担当者になります。そのため、余裕を持った、確実な日程で決済日を設定することになるため、変更するということがないのです。
しかし、契約日については、売主と買主の都合で変わったりすることがあります。これは裏を返すと、仲介会社がコントロールできるところにもなりますので、3者納得する日程を調整していくことになります。売主と買主の都合は様々ですが、仲介会社としての都合は、この「月内契約」になります。
ここからがこの記事でお伝えしたいことですが、この仲介会社側の都合を覚えておくと、何か仲介会社にお願い事をする際に、お願いを聞いてもらいやすくなります。「契約日を月内にする、もしくは最短日程で組むから、⚪️⚪️をしてほしい」という相談の仕方をすると、担当者としては頑張らない理由がありません。。中には、その月の目標数字がすでに揃っていて、無理して月内契約をする必要がない売買営業もいます。担当された方が、どういった立場で対応してくれているのかということは、気にしておくようにしましょう。
ただ、「安くして欲しい」「値引きしてほしい」という、値引き金額を伝えるだけでは効果的ではありません。
気持ちの良い取引をするためにも、相手の立場にたって、おもいやりをもちながら、こちらの要望を通していただけるように話を運ぶことが大切です。
売買営業の歩合給相場
続いて、売買営業の皆様の歩合給についてです。売上については、物件価格の3%というのは他のブログでもご覧いただいたと思います。
下記のようなものが相場となっています。
①契約1件あたり10万円
月末締で歩合月または翌月給与と合算して支払
②売上の10%〜30%(月200万円で月20万円〜60万円計算)
月末締で歩合月または翌月給与と合算して支払
月末締の考え方は、賃貸営業と同じになります。発生ベースと入金ベースの両方が評価の対象です。仮に月額給与が30万円の方が、月200万円を達成し続けていて、その会社の歩合給が仲介手数料売上の20%だった場合を仮定すると、その方の年収は、
(30万円+(200万円×20%))×12ヶ月 = 840万円 となります。
これはあくまで一例ですが、一般社員の歩合給も高いのに、トップセールスの年収を考えるだけでも、嘘みたいな金額になります。不動産営業は夢がみれる反面、過酷な職業であると言えます。そして、この歩合給は、ストック収入で毎月入ってくることが約束されているわけではなく、売り続けなければ入ってこなくなってしまうという特徴があります。この収入を継続し続けることが、非常に大変です。
歩合支給というのは、一般企業のボーナスのように、年に数回で設定しているところが多いです。夏と冬と決算月というように年に3回にわけて支給していることもあります。そのため、月内契約を進めてくるのは、給与のためだけではなく、月々の目標数字を達成するため、ないしはその担当者の立場を自分自身で守るためということに直結していきます。
そのためにも、毎月の締日までに契約を締結すること、決済日を遅らせないことというのは、非常に重要になってきます。
ここからは、賃貸営業も売買営業も共通していて、この記事のポイントになるところですが、こういう給与の仕組みになっているため、仲介手数料の値引きをおこなうということは、目の前の営業担当の方の立場をあやうくする、もしくは給与を下げている行為になってしまうわけです。
その辺りを念頭にいれて、慎重に取引をおこなっていく必要があります。
賃貸営業については、仲介手数料無料と謳うところも増えてきておりますが、それは、ADが増額された物件を提案することで、借主から報酬をもらえなくても貸主から利益を確保できることがあるからです。売買営業については、仲介手数料の値引きはほとんど難しいと思ってください。特に、その物件が「優良物件」だった場合、仲介業の業務量は一緒で、仲介手数料のお値引をご希望されているお客様とお仕事をするよりも、正規の仲介手数料をお支払いただくお客様とお仕事する方がはるかに健全に取引ができてしまうため、値引の対応をしないように、会社からも言われてしまいます。残念ながら、会社の指示を振り切って、仲介手数料を値引することは、営業担当の方にはメリットを感じることができません。
例えば、仲介手数料の値引き交渉をするなら、「明日にでも契約する」という期日を優遇したり「他の所有物件の売却を専任で任せる」というような追加で売上があがるようなご提案や、「もう一件同じ担当者の方から購入する」というようなことをご相談すると効果的ではあると思います。
インターネットが普及して、全ての物件が掲載されているという風に考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、営業担当者それぞれ、まだ公開していない未公開の物件情報というのも持っています。掲載作業が追いついていなくて、まだ表に出ていない物件などはやはり存在するのです。
不動産営業もプロである前に「人」です。無理難題を一方的に提案されるような方とは、お付き合いすることは難しいでしょう。そういった色々なご要望をご提示される方に、非公開の物件をご提案しても、トラブルの元になってしまうことが想像できてしまいます。そうすると結果的に、買主としては、いい物件を購入したいと考えていますが、その物件情報は掲載されているものからお選びいただくことになってしまいます。
不動産取引においては、大きな金額であるが故に、「騙されたくないので細かいことでも疑う」「少しでも安く買いたい」という気持ちが働くことはよくわかります。しかし、あまりにも過度にそういった行動をとってしまうと、本来の目的を達成できなくなってしまう可能性があるのです。
相手の「立場」を知り、不動産取引の仕組みをよく理解することで、
まとめ
不動産営業の歩合体系や目標数字をご紹介しました。本記事の趣旨としては、相手の「立場」を理解して、スムーズかつお互いの利害関係を一致させながら気持ちよく不動産取引をおこなっていただくためにご紹介をしております。不動産営業も「人」です。こういった情報を逆手にとったり、自分の都合ばかり伝えたとしても、相手も不動産のプロです。すぐに気づきますし、きっと不動産営業はみなさんから離れていくことになってしまうでしょう。自分が検討している物件の立場も考えなければいけません。全てに共通することは、「おもいやりと想像力」です。物件の立場、相手の立場を全て考慮して、その上で、ご自身の要望をご相談するというような手順をとるだけで、関わる人たちがwinwinになると考えています。
不動産のことを何もわからない、いちから学んでみたい、勉強してから購入したいという方は、不動産の勉強をしていただくために、不動産業界の内側の情報を提供しております。いつでもお気軽にご相談くださいませ。