高利回りも夢じゃない!?築古戸建投資のメリット・デメリット
不動産投資は、マンション経営やアパート一棟買いを想像する方が多いと思いますが、近年、注目を集めているのは比較的少額で始められる「築古戸建投資」です。
築古戸建とは、一般的に築20〜30年以上経過した古い木造戸建住宅のことをいいます。特に、地方都市や郊外エリアの空き家物件を活用して、高利回りを狙う動きが活発になっていると感じています。
「古い家に投資する価値なんてあるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
実は、戸建ての賃貸物件は、潜在的な需要はあるものの供給が少なく、築年数が古くても条件次第で借り手がつきやすい傾向にあるのです。
築古戸建投資について、メリット・デメリット、具体的な利回りシミュレーションを交えながら、投資計画の進め方についてもわかりやすく解説していきます。
■築古戸建投資のメリット
まず、築古戸建に投資するメリットにはどのようなものがあるか見ていきましょう。
・取得費用を抑えられる
築古戸建投資の大きな魅力は、まず「安さ」です。築年数の経過によって価格が大幅に下がっており、特に空き家は「土地の値段に近い価格」で売られるケースもあります。地方では300万円以下で購入できる物件も珍しくありません。初期費用を抑えられるため、投資を始めやすいのが魅力です。
・高利回りが狙える
取得にかかる費用が少ない分、賃貸に出したときの利回りが高くなる傾向にあります。もちろん運用にかかるコストや空室リスクを考慮する必要はありますが、新築アパートや、区分マンションに比べて高い利回りを狙える点は魅力です。具体的な利回りの例については、後ほど詳しくご紹介します。
・安定した入居期間を確保できる
築古戸建投資の運用方法は、その名の通り「戸建賃貸」になります。戸建賃貸の入居者の大半はファミリー層で、調査によるとファミリー層の平均居住期間は約5年で単身世帯より長い傾向にあります(日管協短観: https://www.jpm.jp/marketdata/pdf/tankan28.pdf)。
また子育て世帯は、お子様の小学校区などの関係もあり、一度引越をすると簡単に次の住まいに移れない理由が多くあります。単身のように1人で全て決断するというよりは、ご家族で話し合いをして住まいを決めている面もあり、入居の決断までは時間がかかるものの、入居したら長く住むという特徴があります。安定したインカムゲインを期待できるのも、大きなメリットです。
■築古戸建投資のデメリット
一方で、築古戸建投資には注意すべきデメリットも存在します。
・修繕費用
外壁や屋根、水回りなどの老朽化は避けられず、入居前に数百万円単位のリフォームが必要になることも。購入価格は安くても、修繕費を加えると想定以上のコストがかかる場合があります。そのため、着手するにしても購入前にどのくらい費用がかかるか、概算でも見積もりをとっておく必要があります。
・建築制限などの法的リスク
築古戸建には「再建築不可物件」と呼ばれる法的リスクのある物件も存在します。これは建築基準法上の接道要件を満たしておらず、新たな建て替えができない物件のことです。価格は安いですが、出口戦略が限られるため注意が必要です。また、相続登記がされていないなど、権利関係の整理に手間がかかる物件もあります。
・融資を受けにくい
築年数が古い物件は担保評価が低く、金融機関からの融資が受けにくい傾向にあります。そのため、フルローンや長期ローンは難しく、現金や短期の借入れで購入するケースが一般的です。資金計画をしっかり立てておく必要があります。
■利回り計算シミュレーション
「実際、築古戸建投資の利回りってどうなの?」という方のために、ここで簡単なシミュレーションをしてみましょう。
ケース1:築古戸建を300万円で購入した場合
・購入価格:300万円
・リフォーム費用:200万円
・合計投資額:500万円
・家賃設定:月5万円(年間60万円)
表面利回り=年間家賃÷合計投資額×100=60万円÷500万円 × 100 = 12%
12%は、新築アパートや区分マンションではなかなか出せない高い数値です。
ケース2:リフォーム費用が膨らんだ場合
・購入価格:300万円
・リフォーム費用:400万円
・合計投資額:700万円
・家賃設定:月6万円(年間72万円)
表面利回り=72万円÷700万円×100 = 約10.2%
修繕費がかさむと、利回りは大きく下がってしまいます。築古戸建投資が「物件の見極め」と「リフォーム費用の管理」にかかっているといわれるのはこのためです。
ケース3:高めの家賃を設定できた場合
・購入価格:400万円
・リフォーム費用:200万円
・合計投資額:600万円
・家賃設定:月7万円(年間84万円)
表面利回り=84万円÷600万円×100=14%
駐車場付き、交通や生活の利便性が高いエリアなど、安定した需要が見込める物件は、家賃を高めに設定できる可能性があります。その結果、利回りも大きく改善します。
■利回りを考えるときの注意点
紹介したのは、あくまで「表面利回り」です。物件の購入価格に対して、どれくらいの家賃を得られているか、コストを考慮せず計算し、収益性の目安を示すものと考えてください。より現実的な数値を知るには、以下の運用にかかるコストも差し引いて「実質利回り」を計算する必要があります。
・固定資産税
・火災保険料
・管理費用(清掃や草刈りなど)
・入居者の入れ替え時のリフォーム費用
・空室期間の損失
表面利回りが10%を超えていても、実質的には7〜9%程度に落ち着くことも少なくありません。
■安定して高利回りを目指すには?
では、築古戸建投資で高い利回りを目指すためにはどんなことに意識を向ければ良いのか。ポイントをご紹介しましょう。
・エリア選定
人口が減少している地域では、入居者を見つけるのが難しくなるリスクがあります。地方都市でも、大学や工業団地の近く、交通アクセスが良いエリアを狙うのがおすすめです。
長崎市では、斜面地よりも平地や駐車場が確保できるエリアの方が賃貸需要は安定しています。しかしながら、ファミリーなど安価な一戸建ての賃貸物件を探している層も多く、築古戸建物件は斜面地であっても需要があります。
・建物の見極め
築古戸建の場合、購入前に必ずチェックしていただきたいのが「雨漏り」「シロアリ」「基礎や柱の劣化」です。これらは修繕費用を増大させる原因となります。
内覧時には懐中電灯を持参し、天井裏や床下も確認してみてください。
・リフォーム見積もり
不動産会社や工務店に同行してもらい、リフォーム費用を事前に把握することが重要です。
「購入後に予想外の修繕が発覚して赤字になった」という事態を避けるため、最低限の修繕と追加リフォームの可能性を考慮したうえで判断しましょう。
■具体的な投資計画を立てよう
実際に築古戸建投資を始める際は、次のような流れで計画を立てるのがおすすめです。
1.市場調査
まずは市場調査から始めます。エリアによっての需要は異なります。ターゲットとなる入居者層を想定し、生活や交通の利便性や教育機関、病院などの状況を確認しましょう。同じ地域で入居者募集中、成約済みの物件の賃料や、条件なども調べてみましょう。
2.資金計画
資金計画を固めます。自己資金をどの程度投じるのか、修繕費や予備費を含めてどのくらいの資金を準備するのかを明確にします。現金購入が基本ですが、自己資金と融資を組み合わせることで投資規模を広げる選択肢もあります。
3.物件選定
具体的な物件探しに進みます。購入価格ばかりにとらわれず、将来の出口戦略まで見据えて選定することが大切です。売却や建て替えの可能性、土地の流動性なども考慮しましょう。
4.リフォーム計画
物件が決まったら、建物の状態をしっかりと調査し、詳細な修繕計画を立てます。最低限必要なリフォームと、賃料を上げるために実施するリフォームを分け、収支シミュレーションに落とし込みます。この段階で収益性が見込めない場合は、購入を見送る判断も必要です。
5.管理・運用の準備
賃貸物件として運用するための準備を整えます。自主管理するのか、管理会社に委託するのかを決め、入居者募集やトラブル対応の体制を構築、火災保険の加入などしましょう。
6.専門家の意見を参考にする
築古戸建投資は、自己判断だけでは見落としがちなリスクが多くあります。そこで頼りになるのが専門家です。
不動産会社は、立地の需要や市場価格を見極め、適切な物件を紹介してくれます。地域の賃貸、売買の情報に精通した業者に相談すると良いでしょう。
建築士・リフォーム業者には、修繕に必要な工事内容や費用を見積もりや、施工を依頼できます。築古戸建の取り扱い実績のある業者が安心です。
また、相続登記や所有権移転といった権利関係の整理を正確かつ確実に行うには、司法書士への依頼が不可欠です。
■まとめ
築古戸建投資には、少額から始められる手軽さと高利回りが狙える可能性があります。一方で、修繕費や法的リスクといった課題もあり、とにかく物件価格が安ければいいというわけではありません。
しかし、特徴やリスクを理解し、綿密な計画を立てて臨めば、リスクを抑えて、安定した運用が見込めます。
何より手持ちの資金が少なくても始められる点で、投資の第一歩として挑戦しやすいジャンルでもあります。経験を積みながら、実績を作り、将来的に投資の規模を広げることも可能です。
まずは市場調査や物件選びなどの情報収集から始めてみるのがおすすめです。
インターネットで調べるのはもちろん、地域の不動産情報に詳しい会社に相談してみるのもおすすめです。実際に現地を訪れてみると思いがけない情報や、掘り出し物の物件に出会えるかもしれません。