
その不動産、私の年収で買えるかな?
マイホーム購入費用(住宅費)は、教育費、老後資金と並び、人生の三大支出と言われます。一生に一度あるかないかの大きな買い物。だからこそ、普段の買い物とは違って「自分の身の丈に合った金額」がわかりにくい側面もあります。また多くの方は、マイホーム購入にあたり住宅ローンを組みますので、さらに「私の年収でどれくらいのローンが組めるんだろう?」「それによって、買える不動産も変わってくるよね……」という不安もあることでしょう。
そこで今回は、住宅ローンを組むにあたり知っておきたい「審査金利」や「返済利率」といった考え方、そして住宅ローンで不動産を購入する場合、自分はどれくらい借り入れができて、無理なく返済できるのか計算する方法を紹介したいと思います。
1.審査金利と実行金利について知ろう
住宅ローンには金利が設定されています。金利とは、借り入れた元金に対して支払う利息の割合のことです。融資の審査が通ったら、金利と借入可能金額などが正式に決定し、住宅ローンが実行される。これが基本的な住宅ローンの手続きの流れです。
実はこの審査のプロセスでは、実際の住宅ローンに対して適用される「実行金利」とは別に、審査のためだけに使われる「審査金利」という金利が存在します。審査金利は、実行金利よりも高めに設定してあります。なぜなら、お金を貸し出す金融機関としては、貸した後に金利が上昇した場合、返済が滞ってしまうのは困るからです。
そのため、審査時は高めの金利を基準に調査することで「実行時の金利より高い金利となっても本当に返していけるのか?」が判断されます。一般的に、実行金利の相場が1%だとすると、審査金利は4%ほどに設定されます。
つまり、住宅ローンで借りられる金額は、ご自身が収入などから「これくらいまでなら返せそう」と思っている金額よりも少なくなる場合があるのです。
2.自分の適正な不動産金額を計算する方法
では、一体あなたはどれくらいの住宅ローンを借りて不動産を購入することができるのでしょうか。借りられるだけでなく、将来にわたり無理なく返せることも大切なポイントです。
そうした自分にとってのいわば「適正な不動産金額」の目安を求めるにあたり、重要となるのが「返済比率」です。これは年収の中で住宅ローンの返済額が占める割合のことです。比率が低いほど返済に余裕が生まれ、高いほど家計を圧迫することが考えられます。金融機関はそれぞれ独自の返済比率を設けており、審査の重要な判断基準としているのです。
一般的な住宅ローンの場合、返済比率は年収400万円以上で20〜35%、それ以上の収入や条件が良い人だともっと高くなることもあります。
早速計算してみましょう。
前提条件は、以下を設定します。
——————————-
・年収:400万円
・返済比率:30%
・借入期間:35年
・金利:実行金利=1.0%、審査金利=4.0%
・返済方式:元利均等返済
——————————-
まず、返済比率から年間返済可能額、月返済可能額を算出します
年間返済可能額:年収400万円×30%=120万円
月返済可能額:120万円÷12カ月=10万円
※もし自動車ローンなど他の借り入れがある場合は、その返済額を上記の返済可能額から差し引いてください。
次に、審査金利で100万円借りた場合の月返済額を算出し(金融機関の返済シミュレーターなどを活用)、1.で出した月返済可能額をもとに計算することで、借り入れ可能額の目安を算出できます。
金利4%で100万円を35年借りた場合、月々の返済額は約4,427円です。
10万円(月返済可能額)÷4,427≒22.58
上記の計算によって「100万円単位で何倍借りられるか」がわかったので、最後に100万を乗じれば求める金額が出てきます。
22.58×100万=2,258万円
つまり、住宅ローンで借りられる金額(自分が購入できる不動産金額)の目安は「約2,258万円」だとわかります。
3.フラット35だと借り入れられる金額が増える!?
ちなみにフラット35(最長35年の全期間固定金利の住宅ローン)の場合、前項で説明した一般的な住宅ローンより借り入れられる金額は大きくなります。
理由は、フラット35では「審査金利=実行金利」で審査が行われるからです。つまり、同じ年収、金利、借入期間でも、より多く借り入れられるメリットがあるのです。
例として、前項で行なった計算方法を「金利2%のフラット35」を利用したとして考えてみましょう。
金利2%で100万円を35年借りた場合、月々の返済額は約3,312円です。
10万円(月返済可能額)÷3,312≒30.19
30.19×100万=3,019万円
単純計算ではありますが、借り入れ可能額の目安は、前項で計算した「2,258万円」よりも761万円多くなりました。
一方で、フラット35には注意すべき点もあります。全期間固定金利のため安心感はあるものの、変動金利型と比べると金利はやや高めに設定されています。また審査基準が、一般の住宅ローンと異なる点も注意したほうがよいでしょう。
4.まとめ
住宅ローンの借入可能額の目安について解説しました。
マイホーム購入では、「こんな家に住みたい!」といった夢や希望が先立ってしまいがちですが、先立つものがなければ購入はできません。また返済能力をオーバーした借り入れは、家計への大きな負担となります。
物件を探し始める前に、借り入れできる金額や「自分が購入できて、その後も安心して暮らせる不動産金額」を把握し、家計に無理のない返済計画を立てることが非常に大切です。