築古戸建投資における「出口戦略」の考え方
「築古戸建投資が人気だけど、最後は売れなくて塩漬けになってしまうのではないか?」
築年数の経過した一軒家を購入し、賃貸で運用していく「築古戸建投資」は注目度の高い投資方法ではあるものの、こうした不安から踏み出せない方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、これまで多くの「不動産投資に挑戦する方」をサポートしてきた私は、「築古戸建投資に出口はない」とは決して思いません。
なぜなら、そもそも不動産投資の「出口戦略」は、売却だけではないからです。
築古戸建投資で成功する人は、物件を購入する段階で、すでに複数の「出口」を想定しています。この記事では、築古戸建投資における具体的な出口戦略の3つのパターンを紹介したいと思います。少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
■築古物件でも「出口」は必ずある!
築古戸建物件は、新築や築浅の物件よりも価格が安く、都心部を離れれば数百万円、地方なら数十万のものまであり、ローンを組まず自己資金のみで購入できる場合もあります。「少額から不動産投資に踏み出せる」、また「減価償却による節税効果が望める」など、築古戸建物件投資には魅力が多いのです。
一方で、そうは言っても非常に古い状態で購入した物件です。
「買ったはいいけれど、最終的にはどうすればいいんだろう」と不安に思う気持ちもよくわかります。しかしそれはおそらく、「売却」という1つのゴールしか思い描けていないからなのです。
例えば、これらもすべて築古戸建物件で実現可能な「出口戦略」です。
「安定した家賃収入を、老後も年金のように受け取り続けたい」
「物件の価値を高めて売却し、得たまとまった資金を新たな事業に使いたい」
「大切な資産や住まいとして、家族に引き継ぎたい」
人生のゴールが1つではないように、投資のゴールもまた、ご自身の人生設計や価値観などによって自由に決めることができます。
特に昨今は、ライフスタイルが多様化する中で、「安価な一戸建」を求めている人も増えています。築古戸建の可能性は、むしろ広がっているのです。
これから紹介する、出口戦略の一例を知れば、あなたの不安はきっと解消されて、これから目指したいゴールが見えてくると思います。
■賃貸経営で安定収入を得るパターン
最も基本的な出口戦略と言えるのが、築古戸建てを賃貸して継続的に家賃収入(インカムゲイン)を得ることです。すでにローンを完済済み、あるいはローンを組まずに自己資金で購入した場合、家賃収入のほとんどが手元に残るため、安定した収入の柱となります。入居者がいる限り、公的年金を補う私的年金のように長期にわたって収入を得ることができるのです。
ただし、注意点もあります。
木造の築古戸建は、4年など短い期間で大きく減価償却できて節税につながるのも大きな魅力です(詳細はこちらの記事をご覧ください)。
しかし、減価償却期間が終わると経費が急激に減るため、手元の収入は変わらないのに、帳簿上の利益(課税所得)がグッと大きくなり、所得税や住民税の負担が増えてしまうという状況が起こります。
そのため、家賃収入を得ながら長期的に保有を続ける場合、こうした税金負担が増えるタイミングを見据えた計画を立てておく必要があるのです。
例えば、そのタイミングで「新たな物件購入による減価償却費を確保する」、あるいは「大規模修繕を行って経費を計上する」といったことが対策として考えられます。
■売却して利益を得るパターン
築古戸建物件に、リノベーションなどを行うことで付加価値を高め、購入価格よりも高く売却して利益(キャピタルゲイン)を得るという戦略もあります。
この戦略で成功させるポイントを、3つご紹介しましょう。
ポイント1:安く仕入れる
売却益を大きくするには、「いかに安く仕入れるか」も重要な観点になります。エリアの相場に比べて割安な物件が出ていないか、情報にはいつもアンテナを立てておきましょう。また、地方まで範囲を広げると安価な築古物件は豊富にあります。売却を念頭に置き、条件の良さと安さを兼ね備えた物件がないか、調べてみるのも一案です。
ポイント2:ニーズに合ったリノベーション
ターゲットとなる購入者層(ファミリー層、ペット飼育希望者など)を明確にし、その層が気に入るようなリフォームやデザイン、設備を考えてみましょう。その際、費用対効果を意識することが大切です。過剰な投資は利益を圧迫しかねません。
ポイント3:入念な市場調査
不動産サイトや不動産会社の情報などから、周辺エリアの売買事例や市場のトレンドを調査してみましょう。その上で、現実的な売却価格を設定することが大切です。
ただし、注意したいのは売却時の税金です。
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生するのです。税率は、物件の所有期間によって大きく異なるため、売却のタイミングを検討する上でとても重要です。(所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定されます。)
・短期譲渡所得(所有期間5年以下)
税率:39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
・長期譲渡所得(所有期間5年超)
税率:20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
参考:国税庁No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
国税庁No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
このように、ほぼ2倍と大きな違いがあります。
短期的な売却を目指す場合、高い税率を考えてもなお十分な利益が見込めるかどうか、慎重に計算する必要があるのです。
そのため、最低でも5年以上保有し、長期譲渡所得の税率が適用されるようになったタイミングでの売却を検討する方が、賢明な戦略と言えると思います。
■相続・譲渡・法人化などによって、次のステージへ展開するパターン
賃貸や売却以外にも、築古戸建物件を以下のような方法で、「売って終わり」ではなく次のステージへ展開するという戦略もあります。
・相続、生前贈与で家族に引き継ぐ
お子さんやお孫さんへの資産として、物件を承継する方法です。
この戦略の最大のメリットは相続税の節税効果です。資産を譲渡する場合には税金がかかりますが、その際、ほぼ額面通り(時価)で評価される現金や株式と違い、不動産は「相続税評価額」という一般的に時価よりかなり低い価格で評価されます。
つまり同じ価値の資産であれば、現金よりも不動産で持っていた方が相続時の税金が安くなる可能性が高いのです。さらに、その不動産が毎月の家賃収入を生み出すなら、引き継ぐ家族にも大きなメリットがあります。
この考え方は、生前の元気なうちに行う「生前贈与」でも活用できます。
・投資物件を特定の相手に譲渡する
何らかの理由で投資を引退したい時、資産を整理したい時など、市場で売却する以外に、特定の相手(親戚や知人など)に売却(譲渡)する方法もあります。
もし、周りにいる不動産投資に興味のある人物に譲渡できるのであれば、譲渡側(売主)は売却のための活動(不動産会社との交渉や広告など)をする手間が省けて、信頼できる相手に売却することができます。
一方で、譲受側(買主)もすでに運用が安定している物件を、信頼できる相手から市場価格(あるいは少し有利な条件(※))で譲り受けることができ、スムーズに不動産投資を開始することができます。
(※)ただし、親族間であっても市場価格より極端に安い価格で売買すると、税務署から贈与とみなされて、その差額に対して贈与税が課せられる可能性があります。親しい仲でも適正な価格で売買契約を結びましょう。
・個人から法人へ資産を移す
所有物件が複数に増えて、事業規模が大きくなってきたタイミングで検討したいのが法人化です。自分が設立した「資産管理法人」に、個人で所有する物件を売却する方法で、最大のメリットは「個人の所得税の節税」です。
個人の所得税は累進課税で最大45%に対して、法人税の税率はほぼ一定で約30%です。ある一定の所得(目安:課税所得900万円超)を超えれば、個人で税金を納めるよりも、法人で納める方がトータルの税負担が軽くなるのです。
また、法人として物件を購入することで、再び減価償却を計上できるメリットもあります。
■投資判断を数字で考えるクセをつけよう
ここまで大きく3つの出口戦略パターンを紹介しました。
最も重要なのは、「自分はどの出口を選ぶ可能性があるのか」を、物件を購入する前にシミュレーションしておくことです。
例えば、インカムゲインを狙うのであれば、家賃の下落や空室の増加のリスク、将来の修繕費などを盛り込んだ現実的な資金計画をすることが大切です。また、げんか償却が終わる時期と、その際に増える税負担の対策についても考えておく必要があるでしょう。
一方、キャピタルゲインを狙う場合は、リノベーション費用や諸経費を差し引き、さらに短期譲渡所得あるいは長期譲渡所得を支払った後でも、十分な利益が残るのかどうかシミュレーションすることが大切です。そして、もし想定通りの価格で売れなかった場合のアクション(一定期間売れなければ賃貸に出すなど)も準備しておかなくてはなりません。
築古戸建投資を始める際は、表面利回りなどのわかりやすい数字だけでなく、将来起こりうるさまざまな可能性について、具体的な数字に落とし込んで考えることが成功の確率を高めると言えるでしょう。
■まとめ
築古戸建投資は、購入時に出口戦略を明確に描けているほど、物件選びやリノベーション内容などの選択が研ぎ澄まされていくと思います。
売却だけでなく、さまざまなゴールがあること。そして、そのゴールそれぞれにメリット、デメリットがあることを、この機会にぜひ覚えておいていただければ嬉しいです。そして、築古戸建物件を購入する際には、「この物件はどのような出口があるだろうか?」と一度じっくり考えることを忘れないでください。